凱旋門賞2024
［ＧⅠ凱旋門賞＝２０２４年１０月６日（日曜）３歳上、パリロンシャン競馬場・芝２４００メートル］

　日本馬初の凱旋門賞制覇を目指すシンエンペラー（牡３・矢作）に、心強い〝援軍〟が現れた。１９９９年のエルコンドルパサー、２０１０年ナカヤマフェスタで２度の凱旋門賞２着を経験している二ノ宮敬宇（よしたか）元調教師（７２）が東スポ競馬の取材に応じ、陣営の取り組みを「理想に近い」と評価。日本競馬界の悲願達成を後押しした。

滞在の経験で得られる強み

「普段はそんなに競馬を見ていないんだ」と語る二ノ宮元調教師だが、凱旋門賞が近づいてくると自然と報道は目に入ってくる。前哨戦（アイリッシュチャンピオンＳ）の前からフランスの環境に慣れさせて、調教施設や競馬場の経験を積んでいるシンエンペラー陣営の姿に自身の経験を重ね合わせた。エルコンドルパサーは約半年にわたってフランスに滞在。走法そのものがヨーロッパ仕様に変わったとされている。ナカヤマフェスタも本番の２か月前には渡仏して、前哨戦を経由するなど入念に態勢を整えていった。滞在して経験を積む強みを熟知している。

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二ノ宮元調教師「理想に近いことができている」
二ノ宮敬宇元調教師
凱旋門賞で２度の２着を経験している二ノ宮敬宇元調教師
　時代は流れて、日本馬の受け入れ先には現地で開業する日本人トレーナーの存在があり、フランス競馬を統括するフランスギャロが日本語で発信するなど受け入れ側にも遠征馬に対するノウハウが蓄積されている。「隔世の感、だよね」と二ノ宮元調教師はこの四半世紀における変化を表現した。欧州の競馬は必ずしも個の戦いにならず、他陣営から厳しいプレッシャーを受けることも少なくない…というスタンスから結果に関しての予測はしていないが、日本馬が勝つだけの機は熟してきたという見立てだ。

　そのうえで、陣営がアイリッシュチャンピオンＳの前にパリロンシャン競馬場でスクーリングを兼ねた追い切りを消化した経緯を重要視。「シャンティイから輸送してロンシャンの雰囲気を経験できたのはすごく有意義なことだと思う。日本とはタイムテーブルが違うし、装鞍の時間とか馬房による違いとか、まず人間が慣れることが大事。だから、理想に近いことができているよね」。力を発揮するための準備と過程については太鼓判を押した形だ。

　９９年の凱旋門賞では、エルコンドルパサーがモンジューと劇的な死闘を繰り広げた。あのとき、日本馬が世界の頂点に立つというリアリティーが芽生えたといっても過言ではない。しかし、二ノ宮元調教師はその〝先駆者〟というイメージを否定する。昭和４０年代、〝ミスター競馬〟と称された野平祐二騎手が日本競馬の地位向上を志してフランス長期滞在に踏み切り、シンボリ牧場の代表である和田共弘氏が中心となってその活動を全面的にバックアップした。「今があるのは野平さんや和田さんの存在があったからです」。両者のタッグで挑んだスピードシンボリの凱旋門賞挑戦（６９年）こそが全ての始まり、というのが二ノ宮元調教師の揺るぎない認識であり、そのバトンを受け継いで現代に手渡したととらえている。

　名だたるホースマンたちが何もなかった荒れ地を開拓し、種をまき、水を与えてきたのが日本競馬という〝花〟。スピードシンボリの初挑戦から５５年を経て、開花の時を迎えようとしている。

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https://tospo-keiba.jp/breaking_news/49948